
現代のビジネス界で注目を集める存在、それが“ユニコーン企業”です。ユニコーン企業とは、創業10年以内で評価額が10億ドル(約1500億円)以上の、未上場スタートアップ企業を指します。特にテクノロジー分野の革新的なビジネスモデルや、急成長するサービスを提供する企業が多く、世界中の投資家や企業から大きな注目を集めています。
本記事では、ユニコーン企業の定義や名前の由来、世界を変えたユニコーン企業や日本国内で注目される企業を紹介し、国や民間企業による支援についても解説します。
記事の概要
ユニコーン企業とは?~名前の由来
ユニコーン企業とは、企業価値が10億ドル(約1500億円)以上で、未上場のスタートアップ企業を指します。この言葉は2013年にベンチャーキャピタリスト(投資家)のアイリーン・リー氏が初めて用いたもので、伝説の生き物とされるユニコーンのように“希少で特別な存在”という意味で例えたと言われています。成功したスタートアップ企業の中でも、圧倒的な成長を遂げた企業がこの称号を得られるのです。
ユニコーン企業の特徴には、イノベーションを起点とした独自のビジネスモデルや技術に加え、急成長を支える投資の獲得力などが挙げられます。多くの場合、これらの企業はデジタル技術を活用し、これまでなかった新たな市場を創出することで競争優位を築いています。さらに、ユニコーン企業は単に利益を追求するだけでなく、社会的課題を解決するビジネスモデルを持つことが多いことも特徴です。そのため、ユニコーン企業の存在は経済だけでなく、社会全体にポジティブな影響を与えると期待されています。
世界を変えたユニコーン企業例
ユニコーン企業は、業界や国境を超えて私たちの生活を変える影響力を持っています。ここでは、世界的に注目されるユニコーン企業の例をいくつか紹介します。あなたが日常的に使用しているサービスがあるかもしれません。
1)Bytedance
バイトダンス(ByteDance)は、2012年に設立された中国のテクノロジー企業で、AI技術を活用して急成長を遂げたユニコーン企業です。特に動画共有アプリ「TikTok(中国ではDouyin)」の成功で注目を浴び、短尺動画プラットフォームとして、直感的な操作性とAIによるパーソナライズされたおすすめ機能で幅広い世代に支持されています。TikTokは数十億回以上のダウンロードを記録し、エンターテインメントの新しい形を創造しました。
バイトダンスの成功の要因は、AIアルゴリズムによるコンテンツ最適化にあります。ユーザーの好みを分析し、適切な動画を瞬時に表示することで、エンゲージメント率を大きく向上させました。加えて、広告やEコマース分野への進出も進め、多様な収益モデルを確立しています。
設立から数年で企業価値は数千億ドル規模に達し、ユニコーン企業を超えた「デカコーン企業」とも呼ばれる存在となり、グローバル市場で成功を収めています。バイトダンスは、未来のIT業界を牽引する企業として注目されています。
2)Epic Games
Epic Gamesは、1991年に設立されたアメリカのゲーム開発会社で、代表作「フォートナイト(Fortnite)」で爆発的な人気を得たユニコーン企業です。フォートナイトは、全世界で数億人のプレイヤーを抱える文化現象となりました。Epic Gamesの成功要因は、ゲームエンジン「Unreal Engine」の開発にあります。Unreal Engineは高品質なグラフィックスと柔軟な開発環境を提供し、ゲーム業界だけでなく映画やシミュレーションなどにも利用されています。
さらに、Epic Gamesは「Epic Games Store」を通じてゲーム流通の新しい形を提案し、開発者に有利な収益分配モデルを導入して業界に変革をもたらしました。企業価値は数百億ドルに達し、テクノロジーとクリエイティビティを融合させた未来のビジョンを示す存在として注目されています。ゲームを通じてエンターテインメント業界の枠を広げ、業界の可能性を追求するEpic Gamesの挑戦は続いています。
3)Airbnb
暮らすように旅する新しい体験を提供

Airbnbは、2008年に設立されたアメリカのユニコーン企業で、旅行業界に革新をもたらしました。個人が自宅や部屋を貸し出せるプラットフォームを提供し、急成長を遂げ、現在では220以上の国と地域で800万件以上の宿泊先を掲載しています。Airbnbの魅力は、宿泊施設の多様性と地域密着型の体験にあります。高級ヴィラやユニークなツリーハウス、家庭的な一軒家など、利用者は自分に合った滞在先を選べます。また、「Airbnb体験」では、地域文化を深く体験できるサービスも人気です。
成功の要因は、洗練されたIT技術を駆使したプラットフォームと、個人間取引(P2P)モデルにあります。簡単に宿泊先を検索・予約できるシステムや、信頼を築くレビュー機能が評価されています。柔軟なキャンセルポリシーやカスタマーサポートも旅行者の安心感を高めています。Airbnbは、シェアリングエコノミーの象徴的存在として、旅行業界や世界中の経済活動にも影響を与え続けています。
4)Canva
Canvaは、2013年に設立されたオーストラリア発のデザインプラットフォーム企業で、ユニコーン企業からデカコーン企業へと成長しました。誰でも簡単に美しいデザインを作れるツールを提供し、1億人以上のユーザーに利用されています。「デザインの民主化」を掲げ、プロのスキルがなくても高品質なデザインを作成できる環境を整えています。
Canvaの特徴は、直感的な操作性と60万点以上の豊富なテンプレートです。プレゼンテーションやSNS投稿、名刺など、あらゆるデザインニーズに対応しており、ドラッグ&ドロップで簡単にカスタマイズできます。クラウドベースで、インターネット環境があればどこでも利用可能です。
企業や教育機関向けの「Canva for Teams」や「Canva for Education」などのソリューションも提供し、企業のマーケティングや学校の授業準備に活用されています。企業価値が数百億ドル規模に達し、進化を続けるCanvaは、デザインツールを超えたクリエイティビティを解放するプラットフォームとして注目されています。
日本国内のユニコーン企業例
日本国内にも、世界に負けない独自の価値を提供するユニコーン企業が存在します。その中から、注目すべき企業をいくつか挙げてみましょう。
1)Preferred Networks
Preferred Networks(プリファードネットワークス)は、日本発のユニコーン企業で、人工知能(AI)や深層学習の研究開発を通じ、産業の革新を推進しています。2014年に設立され、短期間で国内外から注目を集め、企業価値は1000億円を超えるとされています。
同社は製造業、医療、交通、エネルギーなど多岐にわたる分野でAIを活用。自動運転技術やスマートファクトリーの推進、がん治療や創薬支援などで成果を上げています。こうした技術は、日本の産業競争力を高めると同時に、社会課題の解決にも貢献しています。
また、ディープラーニングのフレームワーク「Chainer」の開発元としても知られ、現在はオープンソースコミュニティと連携しながら、より幅広いAI技術の発展に取り組んでいます。
Preferred Networksは、最先端のAI技術で社会をより良くすることを目指し、新たなイノベーションを生み出し続けています。

2)スマートニュース
SmartNews(スマートニュース)はAIを活用したニュースアプリを提供しています。2012年に設立され、独自のアルゴリズムでユーザーに最適なニュースを配信する仕組みが評価され、国内外で急成長しました。特に米国市場でも人気を博し、世界中で数千万以上のダウンロードを記録しています。
SmartNewsの強みは、AIによるパーソナライズ機能と、政治・経済・エンタメ・スポーツなど多様なジャンルを網羅する豊富なニュースソースにあります。また、オフラインでも閲覧可能な「Smartモード」など、利便性を高める機能を搭載。こうした革新性が、多くのユーザーに支持されています。近年では、地域ニュースや災害情報の強化、ヘルスケア関連の情報提供など、社会貢献にも注力。SmartNewsは、ニュースの届け方を進化させながら、情報の価値を最大限に引き出すプラットフォームとして成長を続けています。
3)SmartHR
「日本スタートアップ大賞2024」を受賞したSmartHRは、人事・労務管理を効率化するクラウドサービスを提供するユニコーン企業です。煩雑な業務を自動化し、企業の手続きを簡素化することで、中小企業から大企業まで幅広いユーザーに支持されています。
同社のサービスは、雇用契約の電子化や勤怠管理、社会保険手続きのオンライン化など、多岐にわたる機能を備えています。これにより、企業の業務負担を軽減するだけでなく、法改正への対応をスムーズにし、労務管理の効率化を実現しています。また、SmartHRは単なる労務管理ツールにとどまらず、データを活用した人材マネジメントや働き方改革の推進にも貢献。企業の成長を支えるプラットフォームとして、人事業務の未来を変え続けています。
日本初のユニコーン企業と言われた「メルカリ」は、2018年に東京証券取引所マザーズ市場に上場。ユニコーン企業の定義外となりましたが、これらの企業は、日本の強みである技術力や創造性を活かしながら、グローバル市場でも活躍しています。
国や民間企業による支援
政府の支援
日本政府は、スタートアップ支援策を積極的に進めています。例えば、スタートアップビジネス創出支援補助金や地域ベンチャー創出プログラムなど、資金面での支援を行っています。また、規制緩和や起業家教育の充実も推進されています。さらに、経済産業省主導で行われる「J-Startup」プログラムでは、有望なスタートアップ企業を選定し、国内外での事業展開を支援しています。
民間企業の支援
一方で民間企業もさまざまな方法で支援を行い、スタートアップ企業の成長をサポートしています。アクセラレーションプログラムは、新しい企業が早く成長できるように手助けする仕組みで、企業や自治体などと連携して事業を進めていきます。ベンチャーキャピタルは、企業が成長するためにお金を提供し、経営コンサルティングも行いながら将来上場したときに大きな利益を得ることを目指します。ハイリスクではあるものの、ハイリターンを見込んで投資を行うことで、新しいアイデアや技術を持つ企業がさらに発展しやすくなります。大企業がスタートアップとの連携を深める「オープンイノベーション」も増加しており、資金や技術、ネットワークの提供が行われています。
ユニコーン企業が誕生し成長するためには、環境づくりが欠かせません。こうした支援があることで、ユニコーン企業が生まれやすい環境が日本にも整備されつつあります。
おわりに
ユニコーン企業は、イノベーションを通じて世界を変える力を持っています。その成功は、社会的課題を解決するビジネスモデルや、成長を支える環境によって支えられています。日本国内でも、ユニコーン企業が増えつつあり、未来への期待が高まっています。今後も、ユニコーン企業がどのように進化し、社会に影響を与えるのか注目していきましょう。


