世界規模で注目を集めている「メタバース」は、最新技術を駆使して構築された仮想空間です。ユーザーは自分の分身(アバター)を作って自己を表現し、メタバース上に新たな世界やコミュニティを作ることができます。ビジネス分野だけでなく、教育・医療・音楽・エンターテインメントなど様々な分野に応用されることが期待され、今後も活性化すると予想されています。今回はメタバースとVRとの違いや、メタバースを構成する3つの要素など、未来の仮想空間についてご紹介いたします。
記事の概要
メタバースとは
メタバースとは
「メタ」はギリシャ語で「超越」という意味があり、「世界」を意味する「Universe(ユニバース)」とかけ合わせた言葉です。メタバース上では「アバター」と呼ばれる自分のキャラクターを通して参加することができ、人気ゲーム「フォートナイト」や「あつまれどうぶつの森」ですでに体験済みの方も多いかと思います。性別やヘアスタイル、服などを自分の好みに合わせて変えることができ、他のユーザーと会話もできます。どちらも仮想空間として作り出された世界であり、ゲームそのものがメタバースのプラットフォームともいえるでしょう。
現在のインターネットは主に情報を伝えたりデータを共有したりするためのものですが、メタバースは現実世界における企業や人々の活動を再現することができます。仮想空間内での授業やセミナーの開催、企業間のビジネス取引、コミュニティの形成や交流、商品制作やサービスの販売などが可能となっているのです。
また、現実世界では不可能なことも可能にし、創造性や想像力、自分が持っている世界観を大いに発揮できる場でもあります。例えば、「Minecraft(マインクラフト)」は3Dのブロックをいろいろ組み合わせて自由に空間をデザインできるゲームです。山、川、海、家、お城、草原、はたまた海の底や宇宙空間など、自分のイメージやアイデアを形にしていき、さらにそこに人々を集めることもできます。メタバースはユーザーの国籍や性別・年齢など、どれもすべてゼロベース。現実世界とは異なる価値観や文化が花開く可能性を秘めているかもしれません。
メタバースを支えるブロックチェーン
メタバースの構築には、最新のデジタル技術やブロックチェーン技術、人工知能などが使用されています。ブロックチェーンは、データを「ブロック」と呼ばれる小さなパッケージに分け、それぞれのブロックが暗号化されて次々と連結されることで、データの改ざんを防止する技術です。連結されたブロックは複数のコンピューターに分散して保存されるため、「分散型データベース技術」とも言われます。このため、ブロックチェーンは一度登録された情報を改ざんすることが非常に困難で、高い信頼性と透明性を持っているのです。
ブロックチェーンは主に仮想通貨や暗号資産の取引に使用されています。その他にも、投票や証明書管理、データ共有など、様々な用途に応用されることが期待されています。中央集権的なシステムに比べてデータが分散しているため、一つのコンピューターの障害や攻撃によって全体が停止することがなく、高い耐障害性も特徴のひとつです。
VRとメタバースの違い
VRとは
VR(Virtual Reality)は、バーチャルリアリティの略で、仮想現実を体験する技術です。主にVRゴーグルやヘッドマウントディスプレイ(HMD)などの装置を使い、映像化された世界でユーザーが身体を動かすことでコンピューター上の仮想空間を移動し、仮想的なオブジェクトとやり取りすることができます。VRは主に視覚と聴覚に作用するため、味覚や嗅覚、触覚など五感全てを体験することは残念ながらまだできません。しかし、その臨場感の高さから本当にその場にいるような体験が可能となっており、ゲームやエンターテインメント分野で注目されています。
VRとメタバースの関係
一方メタバースは、構築された仮想空間そのものを指しています。VRはメタバースで使われる体験技術であり、大きくとらえるとメタバースの一部ともいえるでしょう。仮想空間を自由に移動したり、仮想的なオブジェクトとやり取りしたりするだけでなく、仮想空間内で自由に創造的な活動を行うことができます。仮想空間自体が現実世界のような社会的な構造を持ち、複数の人々が仮想空間内でコミュニケーションを取ったり、ビジネスを行ったりすることができるようになります。
これからのメタバースは、VRのようなヘッドマウントディスプレイだけでなく、PCやスマートフォンなどの様々なデバイスを使ってアクセスできるようになります。高価な設備や機器がなくてもメタバースに参加できるようになれば、より多くの地域・人々に普及し、スマートフォンのように世界的に広がる可能性を秘めています。
メタバースを構成する3要素
メタバースは以下の3つの要素で構成されています。
仮想世界:仮想世界はVR技術を使って構築された仮想空間のことです。ユーザーは仮想現実の世界を体験するために、ヘッドマウントディスプレイなどのデバイスを使ってアクセスします。仮想世界は、現実世界のような様々な場所や空間、建物、道具、人々などを含み、多様なアクティビティやイベントが行われます。
アバター:アバターとは、仮想世界内でユーザーが操作する仮想的なキャラクターのことです。アバターはユーザーの動きや行動を反映し、他のユーザーとやり取りを行います。
いわば自分の分身であり、自分自身や自分が演じたいキャラクターをアバターにすることができます。「あつまれどうぶつの森」では有名アパレル企業がアバター用の衣装を提供することもあり、現実世界との乖離が少なくなり、アバターをより身近に感じる日も遠くないでしょう。
経済システム:メタバースは現実世界と同様に経済活動が行われることを想定しており、仮想世界内での取引や経済活動を支える経済システムが必要です。例えば、メタバース内で購入したデジタル商品を現実世界で販売することができたり、仮想通貨を使って支払いをすることができたりします。経済システムは分散型のブロックチェーン技術が使われており、今後の発展によってメタバースへのハードルがさらに低くなっていくと考えられます。
メタバースで広がる可能性
メタバースは新しい仕事の場を生み出し、「メタバースクリエイター」と呼ばれる方々も出現しています。アバターデザイナーやキャラクターデザイン、空間デザイナー、メタバースエンジニアなど、クリエイティブな仕事が多くあります。デザインや開発以外にも、仮想世界内でのイベントプランナーやプロジェクトマネージャー、仮想通貨のトレーダー、仮想不動産の仲介業者など、サポートスタッフやマネジメント的な仕事も必要とされています。
メタバース上の仕事には地理的な制約がないため、グローバルな規模での仕事が可能になります。例えば、国の枠を超えて企業や世界中の人々と共同で仮想空間の開発を行ったり、仮想世界内でビジネスを展開したりすることができます。また、メタバースが普及すれば、学校でもバーチャル空間を活用した授業が可能です。海外の学生や先生ともリアルタイムでコミュニケーションを取りながら学ぶことができます。アバター同士でやりとりをするため、現実世界と同じように自分自身や他者とのコミュニケーションスキルや協調性を身につけていくことも考えられます。
新たな仕事を増やすだけでなく、メタバースは従来の仕事を効率化することも期待されています。例えば、オンライン会議ツールを使用すれば、移動や集合する手間や経費をかけずにリモート会議ができます。企業説明会や就職説明会も、ネットさえつながれば参加でき、物理的に移動する必要がありません。また、仮想現実空間で実践的な体験や演習ができることで、より高いビジネススキルや知識を身につけることも可能になります。お客様からのクレーム対応やプレゼンテーションなども、仮想世界内でのトレーニングや研修プログラムとして実施。従来よりも効率的かつ費用対効果の高い教育が提供されるようになるのです。
以上のように、メタバースは新しい仕事や作品発表の場を提供するだけでなく、従来の仕事を効率化できるものです。マーケティングへの利用や商品化促進など、ユーザーが増えると今後ますます市場規模も広がります。今後もメタバースに関する研究開発や実証実験が進められ、私たちの想像を超える多様な職種が登場することが期待されています。
おわりに
本記事ではメタバースの基礎的知識をご紹介しました。メタバースは情報工学の最新技術を駆使した未来の仮想空間です。現実世界にはない新しい価値を提供し、人々の生活やビジネスに革新をもたらす可能性があり、爆発的普及の一歩手間の段階にきているといえるでしょう。システム構築や設備、法整備など、多くの課題を克服する必要がありますが、これまでのインターネットやスマートフォンと同様に、まずは自ら体験してみることも大切です。将来メタバース上で新しい仕事が生まれることを想定し、どんなジャンルの職業に関わりたいかを今から考えていきましょう。