イラスト/デザイン

イラストで人々を惹きつける!コミックイラストレーターとは?


コミックイラストレーターは、現代の文化産業やエンターテイメント分野において重要な役割を果たしている仕事です。漫画やアニメーションに加え、ゲーム・広告・グッズなどコンテンツ産業として日本の経済活動を活発化させています。日本の漫画やアニメ文化は世界中のファンに支持されており、「日本に行ってみたい」という海外からの観光客増加にも貢献。地方にも新たなビジネスチャンスが生まれています。今回の記事では、コミックイラストレーターの仕事内容や1日の流れ、仕事に就くために必要な資格やスキルなどをお伝えします。

コミックイラストレーターとは

作品の世界観をビジュアルで表現する仕事
コミックイラストレーターは、魅力的なキャラクターや背景を描き、作品や物語の世界観をビジュアルで表現する仕事です。マンガや小説、グッズなど、さまざまなメディアや媒体におけるストーリーに命を吹き込み、読者や観客を惹きつける重要な役割を果たします。一般的なイラストレーターはクライアントのさまざまな要望をイラスト化しますが、コミックイラストレーターはライトノベルやゲームなど特定のエンターテイメント分野に特化しています。キャラクターとストーリーを強調することに焦点を当てており、長く愛されている小説の単行本も、表紙のイラストが違うだけで「好きな絵師のイラストだから」と購入する人もいます。たった1枚の絵でも影響力は大きく、日本のアニメ文化の浸透に伴い、国内だけでなく世界的にも注目を集める職業です。

物語の世界観やストーリーを絵で表現する仕事のため、画力はもちろんのこと、多彩な表現技法が求められます。アナログでの基礎画力向上に加え、デジタルの画材にも対応できると仕事の幅も広がります。自分の世界観を表現する「芸術家」と違い、マンガや小説、グッズ販売など、クライアントの意向や作品のイメージを的確に表現することが必要です。作品の売上を左右する重要な要因となりますので、アート(芸術)の視点に偏らない、エンターテイメント産業としての視点を持つことも大切になってきます。

コミックイラストレーターの仕事内容

小説のワンシーンやゲームのキャラクターなど、コミックイラストレーターはクライアントが求めるイメージをイラストにしていきます。作品の世界観や、キャラクターのセリフや性格、設定や時代背景など、さまざまな要素をふまえてイラストを作成。マンガ、小説、ゲーム、グッズ販売などさまざまなジャンルで需要がある仕事です。

仕事の種類

ライトノベル小説の表紙
コミックイラストレーターの主な仕事の一つに、ライトノベルの表紙イラストや作品中における挿し絵が挙げられます。ライトノベルとは恋愛やファンタジー、ミステリーなど主に10~20代向けに書かれた娯楽小説のことを指し、light(軽い)とnovel(小説)を組み合わせた和製英語です。表紙のインパクトは売上を左右する要素となり、トレンドを意識したタッチを取り入れたり、作品の世界観によって描く技法を分けたりといったスキルが求められます。

小説や雑誌、パンフレット等の挿し絵
表紙と同じように、文章や記事の内容を視覚的に表現する挿し絵もニーズがあります。小説では読者のイメージをより鮮明にし、雑誌やパンフレットの記事では内容の理解を促す重要な役割を果たします。長々とした文章よりも、1つの見やすいイラストがあることで本文も読みやすく感じられ、対象読者に合わせたタッチやキャラクター作りが必要です。

カードゲーム/ソーシャルゲーム
ゲーム設定やストーリーの背景を理解し、キャラクターのイラストを描きます。クライアントからの要望や資料の内容を取り込み、ユーザーが興味を抱くように仕上げていきます。カードゲームやスマホゲームは大きさも限られており、制限のある中でいかにイメージ通りのイラストを描くかが問われる仕事です。キャラクターの人気によってはグッズ販売につながることもあります。

広告デザイン
日本のアニメ人気が高まるにつれ、企業や行政、自治体のイベントポスター、チラシなどの広告にもイラストが使われることが増えています。広告の目的やイメージに合わせ、キャラクターデザインやコピーの字体を決めていきます。デザインだけでなくレイアウトのセンスも問われる仕事です。

文房具・玩具などのグッズ用イラスト/メディア用スライド/サムネイル画像 など
ペンやノートといった文房具、おもちゃや日用品などのイラストもコミックイラストレーターが活躍できる分野です。「かわいい」「かっこいい」といったワクワクした感情で購買意欲を高め、人々の生活に彩りを添える仕事です。また、動画やSNSの浸透により、クリック率を高めるためのサムネイル画像や動画作成にイラストが使われることも増えています。ターゲットとする対象ユーザーに合わせたイラストが必要となり、それぞれの依頼によって描き分けるスキルが求められます。

具体的な仕事内容

クライアントとの打ち合わせ
依頼を受けたら、クライアントとの打ち合わせで内容やイメージを共有します。プロジェクトチームを組むこともあり、フリーランスの場合、SNSを通じて受注することもあります。

ラフ作成
クライアントの依頼に沿ったラフを作成します。ラフは「おおまか」という意味のデザイン用語であり、クライアントのイメージやコンセプトを手描きのスケッチやイラストで作成します。ラフをもとにさらに打ち合わせを重ね、下書きを進めていきます。

下書きへの着色、線画作成
ラフにOKサインが出たならば、細部を描き進めていきます。さらに着色作業も進め、クライアントに提出して修正をしていきます。

納品/修正
打ち合わせの段階で決めていた納品日までに作品を仕上げて納品します。クライアントによる最終チェック後、修正があるときは再納品となります。すべてOKとなった状態で完了となります。

1日の流れ

<会社員として勤務する場合>

例)
9:00 出社
メールチェック/社内ミーティング/イラスト制作

12:00 昼休憩

13:00 クライアントとの打ち合わせ

15:00 イラスト制作/メールチェック/資料確認 など

18:00 退社

コミックイラストレーターはデザイン会社やコンテンツ制作会社などの企業に勤める場合と、フリーランスとして活動する場合の2パターンが考えられます。会社勤務で経験と実績を積み、フリーランスとして独立する方も増えてきました。フリーランスになると在宅勤務が中心となりますが、仕事を受けるための営業活動も欠かせません。SNSでの発信や情報収集を積み重ね、人脈を生かして仕事を受注する必要があります。

コミックイラストレーターになるには

コミックイラストレーターになるには、画力を高め、マンガやデザイン、デジタルスキルなどを身につける必要があります。独学以外では、一般的に美術系の大学や専門学校への進学が近道です。専攻やコースのカリキュラムを通じて作品を多数描き、先生方からの指導を素直に受けとめ、基礎画力と応用力を高めていく過程が必要です。デジタル技術の習得は必須といえる時代であり、IllustratorやPhotoshopをはじめとするデジタルツールやテクニックを学ぶことも大切です。
プロになるためには卒業までに自分の作品集であるポートフォリオを作成し、デザイン会社やゲーム会社、コンテンツ制作会社などへの就職を目指しましょう。デビューして経験を積み、「あなたに頼みたい」という指名が増えてくれば、独立してフリーランスという道も開けてきます。

コミックイラストレーターに必要な資格やスキル

コミックイラストレーターに求められるのはなんといっても画力です。国家資格や特別な資格を取得する必要ありませんが、クライアントが求めるイラストや風景を的確に表現できる高いスキルが求められます。手描きの作品だけでなく、デジタルツールを使いこなせることも働く上では必要となります。学生の間に、就職活動の一環として各種検定に挑戦しておくこともおすすめです。

*Illustrator®クリエイター能力認定試験
*Photoshop®クリエイター能力試験
*CGクリエイター検定1~3級
*色彩検定2・3級

コミックイラストレーターに求められる知識や資質

何でも一人で描けるデッサン力
キャラクターだけでなく、背景やアイテムなど幅広いジャンルを描けることは強みになります。人体や風景、アイテムといった細かなところまですべて自分で描ける力が必要です。業務上は分担制になることもありますが、幅広い対象を描けることは、仕事を受注する上で強みとなるポイントです。

「あなたに描いてほしい」と思わせるオリジナリティ
今やAIがイラストを描く時代となり、コミックイラストレーターとして働くためには個性を高めて作風を確立することも必要です。その一方で、クライアントの要望に合わせた画力も必要となり、常に向上心を持って描き続けるメンタルも必要となります。

柔軟で独自性の高い発想力
コミックイラストレーターはクライアントからの依頼に合わせた絵を描く仕事です。自分のイメージや世界観に囚われず、豊かな発想や創造力が試されます。

継続する力とコミュニケーション能力
〆切の厳守やクライアントからの度重なる修正依頼、納期前の長時間作業など、どの仕事でも壁にぶつかるときがあります。それでも描き続ける精神力や集中力も必要です。クライアントとの打ち合わせではコミュニケーション力も必要となりますので、学校のイベントやインターンシップなどにチャレンジすることもおすすめです。

おわりに

コミックイラストレーターは人々の経済活動を促し、文化を形作る役割も果たしています。クライアントと協力し、独自の視点やアイデア、新たな世界観を視覚的に表現できる仕事でもあります。活躍の場は今後も広がる可能性を秘めており、国内・国外問わず働くこともできます。飽くなき向上心を持ち、「描くことが好き」という気持ちを将来の仕事につなげていきましょう。