IT技術によって成り立っている現代社会において、エンジニアは必要不可欠な職業です。製造・金融・医療など、さまざまな分野でITが取り入れられており、エンジニアの仕事内容は業界や分野によって違います。プログラミング言語やITスキルはもちろんのこと、コミュニケーション能力や語学力を高めれば転職に有利となり、海外で働くチャンスもあります。エンジニアやIT業界への就職を視野に入れている方のために、今回はエンジニアの種類や仕事内容をご紹介します。

エンジニアとは

エンジニアとは

エンジニアといえば「システムエンジニア（SE）」を一番に思い浮かべる方も多いでしょう。エンジニア（Engineer）はもともと「技術者」という意味をもち、工学の専門的知識や技術を備えている人のことです。工学とは、数学や化学・物理学といった基礎科学の学問を、製造や設計・検査など工業過程に応用する技術の総称です。

「理系の仕事」「難しそう」といったイメージがあるかもしれませんが、顧客（クライアント）へのヒアリングや仕様書の作成など、会話力や文章力を発揮して文系出身のエンジニアも活躍しています。車・家電・機械の開発や、近年ではインターネットやAI（人工知能）といったIT分野など、幅広い分野に広がっている職種です。それぞれの分野によって「システムエンジニア」「ITエンジニア」「AIエンジニア」「インフラエンジニア」など呼び方が違い、業務内容も異なってきます。

システムエンジニア（SE）とは

文字通り、システムやソフトウェアの開発・設計を担う仕事です。システム開発は、開発を依頼する会社や団体へのヒアリングから始まります。どんなシステムを作りたいのか、どんな機能を必要としているのかを聞きとり、要求をまとめ（要求分析）、必要とする要件定義を決めます。システムエンジニアはそれらを仕様書（基本設計書や詳細設計書）にまとめ、外部および内部設計を行います。仕様書をもとにプログラミングする仕事は主にプログラマーが担当します。テスト工程を経て、開発したシステムやソフトウェアの使用を開始し、契約によっては運用・保守まで行う場合もあります。システム開発におけるこれらの工程は「上流工程」と呼ばれ、システムエンジニアは開発プロジェクトのまとめ役を担っているのです。

システムエンジニア以外のエンジニア

システムやソフトウェア開発以外にも、エンジニアは多くの場で活躍しています。日常的に使用することも多い動画サイトや通販サイトなど、Webサービスを支えるエンジニアやスマートフォンのアプリケーションを作るエンジニア、AIを扱うエンジニア、サイバー犯罪を防ぐセキュリティエンジニアなどがあります。

Webエンジニア

動画やSNS、通販など、Web上で稼働するサービスの開発や運用・保守を行うエンジニアを「Webエンジニア」と呼びます。主流となっているアプリケーション開発も含まれ、また情報を守るためのセキュリティスキルも必要とされます。私たちユーザーが目にする部分（インターフェース）の開発・保守を行う「フロントエンドエンジニア」と、内部のデータ処理や運用を行う「サーバーサイドエンジニア」に分けて呼ぶこともあります。

アプリケーションエンジニア

アプリケーションエンジニアは、Web上で使用できるアプリやスマートフォン向けアプリ、業務系アプリなどを開発します。ゲームやSNS、地図アプリなどにはなじみがあるかと思いますが、各企業の業務効率化や経営改善、人事や顧客管理などに用いる業務系アプリも需要があります。銀行ATMや鉄道の自動改札機なども実はアプリケーションによるもの。近年ではITシステムにアプリケーションが組み込まれることも多く、今後も需要が高い状態が続くと考えられます。

テストエンジニア

テストエンジニアは、システムエンジニアやプログラマーによって開発された製品（システムやアプリケーションなど）が正しく作動し、問題がないか検証を担当するエンジニアです。バグ（エラー）を見つけ、原因分析や改善につながる提案を行います。IT分野の発展に伴ってクライアントが要求するレベルも高くなっています。アルバイトや経験の浅いエンジニアが担当して納品後に問題が起きるよりも、テストエンジニアがいることでより高品質な製品を開発することができるのです。今後テスト自体が自動化されても、原因究明や改善点の提案は人間が行わなければならず、開発工程においてテストエンジニアは欠かせない人材といえます。

ブリッジエンジニア

システム開発において業務の一部を国外で行う「オフショア開発」が増えています。「ブリッジエンジニア」は異なる国の企業が共同で開発を行う際に、言語や文化の垣根を超えて円滑に開発が進むためのブリッジ（橋渡し）となるエンジニアです。言葉や生活習慣はもちろんのこと、日本企業と海外では打ち合わせの進め方や働き方そのものも異なります。プロジェクトがスムーズに進むよう、通訳や設計書の翻訳、品質チェック、進捗管理などを行います。エンジニアとしてのスキルに加え、現地の言葉やコミュニケーション能力が必要となる仕事です。

AIエンジニア

AIエンジニアはAI（人工知能）を用いてシステム開発やデータ解析を行うエンジニアです。AIは大量のデータ（ビッグデータ）の収集・分析・処理ができ、さらに機械学習やディープラーニングを通して産業活動や生活に便利なシステムを作り出すことができます。音声認識や自動運転、AIチャット、お掃除ロボットなど、すでにAIはとても身近なものになりつつあります。医療・福祉・教育などさまざまな分野に広がりを見せ、ビジネスの可能性を大きく広げるものと考えられています。

組み込み系エンジニア

組み込み系エンジニアは家電製品などの製品に組み込まれたソフトウェアを開発するエンジニアです。身近にある例として、洗い・すすぎ・脱水を自動で行う洗濯機や、スイッチひとつで炊き加減や時間を調節できる炊飯器などがあります。マイコンと呼ばれる小型コンピュータにプログラミングされた内容によって、自動で運転するシステムです。特に今後はスマートフォンやパソコン、医療機器などで使われる画像処理を組み込む技術が注目されています。

インフラエンジニア

インフラエンジニアはITインフラの構築・設定・管理などを担うエンジニアの総称です。インフラとは、人々の日常生活を支える水道・ガス・電気・交通網などの基盤を指します。その中でも、パソコンやスマートフォン、コンピュータなどIT技術に関わるものをITインフラと呼びます。停電が起きたら復旧作業が必要なように、IT環境においてもトラブルやエラーが発生したときは専門知識と技術を活かした迅速な対応が必要です。

・インフラエンジニアの種類

インフラエンジニアは、サーバーエンジニア・ネットワークエンジニア・クラウドエンジニア・セキュリティエンジニア、データベースエンジニアなどに分かれます。24時間365日、ユーザーがいつでもどこでもIT技術を使えるよう、サーバー落ちやネットがつながらないなどのアクシデントに対応します。このWebページの閲覧も、快適に見ることができるのはインフラエンジニアが正常な状態を維持しているからこそ。インターネット犯罪やサイバー攻撃が増えていることへの対策も急務であり、インフラエンジニアの中でも「セキュリティエンジニア」が注目を集めています。

その他のエンジニア

上記の他に、営業を兼ねるセールスエンジニアやサポートエンジニア、医療関係に特化した院内エンジニア、社内SE、知識と技術を活かしてアドバイスを行うITコンサルタントなどがあります。

エンジニアに向いている人の特徴や必要なスキルとは

エンジニアに向いている人の特徴

エンジニアはシステム開発の専門家であり、プログラミングや技術的なスキルはもちろんのこと、ITや機械への好奇心、情報収集能力も必要です。一人で黙々と作業するイメージがあるかもしれませんが、チームで働く場合もあり、クライアントやメンバーと円滑に仕事を進行するコミュニケーション能力も大切です。

エンジニアはいわば「縁の下の力持ち」。自分が関わったシステムやプロジェクトが完成したときの達成感はひとしおです。ゼロから１にする作業を苦と捉えず、ものを作り上げることに喜びを感じることができたり、チームで働くことを楽しいと思える気持ちがあれば尚よいでしょう。

エンジニアに必要なスキル

エンジニアになるには、高校卒業後に大学や専門学校で学び、関連部署のある企業や開発会社に就職することが一般的な道のりです。OSや開発ツールのソフトウェア、メモリや入出力装置などコンピュータの構成要素であるハードウェア、データベース、ネットワークなどのIT関連の基礎知識に加え、プログラミングスキルも必須です。Java・PHP・JavaScript・Ruby・Pythonなど、プロジェクトや携わる領域により使用言語が異なりますので、徐々に対応可能言語を増やしていくことが求められます。

そもそもエンジニアは資格不要の仕事ですが、実力の証明やスキルアップのために各種資格試験への挑戦をおすすめします。「基本情報技術者試験」や「応用情報技術者試験」、「ネットワークスペシャリスト試験」、「プロジェクトマネージャ試験」などは国家資格となり、難易度によっては狭き門となる資格です。「AWS（Amazon Web Service）」認定資格」や「CCNA（Cisco Certified Network Associate、）」、「ORACLE MASTER Gold DBA」など、各企業が認定するベンダー資格の取得もあり、海外での就職を視野に入れる場合やさらなるキャリアアップにつながります。

日本のエンジニアの年収は平均すると400万円～500万円程度。経験年数や実績、プロジェクトや企業の規模によって異なります。海外に目を向けると、スイスやアメリカ、イスラエル・デンマークといった欧米諸国を中心に、平均700～1000万円と日本よりも高くなっています。将来的にどんなプロジェクトや分野に関わりたいか、どの工程に関わりたいか、自分らしいキャリアプランを描いてスキルを磨いていくことが大切です。

おわりに

本記事ではエンジニアの種類と仕事内容をご紹介しました。エンジニアと一口に言ってもさまざまな種類があります。DX（デジタルトランスフォーメーション）を進める日本において、また世界中の国々において、エンジニアは社会を支える、将来性のある重要な仕事です。未経験から始めてたくさんの経験を積み、一歩一歩キャリアを高めていく。やりがいを見つけ、自分の性格や適性に合ったエンジニアを目指していきましょう。